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◆熊本暮らし人まつり みずあかりとは?

熊本暮らし人まつり「みずあかり」は、「竹」「火」「水」「ろうそく」といった熊本の資源を生かした灯りの祭典です。秋の夜、熊本城周辺に2日間で約5万4千個のろうそくが灯ります。熊本の魅力を再発見し「ここに暮らす喜びと、切なさまでも共感できる市民と地域でありたい」というコンセプトのもと、2004(平成16)年にスタートしました。

「みずあかり」は、竹灯籠のオブジェを並べて美しい風景を作ることだけではなく、その「過程(プロセス)」を大事にしている祭りです。運営は、延べ約6,000人のボランティアの手によって行われます。竹灯籠の制作、設置、当日の運営、その後の片付けまで、地元企業、市役所や県庁の職員、自衛隊、学生、一般市民ボランティアなど多くの人たちの協力によって成り立っています。

必要な経費の大半は、企業や団体から1口2万円の協賛金を集めております。また参加する企業が車を出したり、自社製品を提供したり、とできるだけ経費を抑える努力をしています。

「みずあかり」の見せ場のひとつに、熊本城のお堀の役割も果たしている坪井川に浮かぶ「浮き灯籠」があります。坪井川の水面に揺れる約5,000個の浮き灯籠の灯りは、熊本の秋の夜を、より美しく幻想的な世界へ変化させます。

また、竹のぼんぼりに熊本の名水を注ぎ、中に和ろうそくを立て、これに阿蘇のご神火を点し、願いごとを書いた短冊を添えた「竹ぼんぼり」をご神木の周りに並べます。献灯用の竹ぼんぼりには、日本一の生産量を誇る、水俣の櫨(はぜ)ろうそくを使用しています。

「みずあかり」は「わざわざ訪れる価値のある、本物の祭り」と思っていただけるような、熊本城の新たな景観を創り出します。それと同時に、自分たちが暮らす地域を「自分たちの手で創造する」という意識の啓発を行い、熊本の新しい力となることを目指しています。

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◆みずあかりのはじまり

 熊本城から続く、桜町から花畑公園にかけて続く道路。2004年から始まった「熊本暮らし人まつり みずあかり」は、年を追うごとに熊本の新しい市民の祭りとして賑わいを増しています。
「熊本暮らし人まつり みずあかり」のコンセプトは、故郷・熊本の魅力を再発見し、“ここに暮らす喜びや切なさまでも共感できる市民と地域でありたい”ということ。 そして、市民が市民の力でこの祭りを作り、運営し熊本の活力を生み出すこと。

 “熊本暮らし人まつり みずあかり”は、市や県など行政のお金を使わずに民間企業の協賛を頂き 、市民の力で制作から運営まですべて行っている市民のお祭りです。もちろん、市や県関係の職員、自衛隊員も市民ボランティアとして参加し、市民一丸となって開催しています。

秋の夜のシンボルロード一帯、花畑公園、熊本城長塀前・坪井川を2日間で5万4千個ほどのろうそくの灯かりが彩ります。

花畑公園では、神事を終えた神聖な阿蘇の中岳から採火された御神火が、暮らし人(市民)が献灯する竹ぼんぼりの灯かりへと受け継がれていきます。家族の安全、夢の実現、恋の成就、世界の平和などの願い事を書いた短冊を添えて…。灯かりを演出する水は、熊本が誇る水源の水を使用します。

宝暦の改革を進めた藩主細川重賢(ほそかわしげかた)の住まいは、この花畑邸(現在:花畑公園)でした。 花畑公園の献灯式で使用される「和ろうそく」は、水俣地区の櫨(はぜ)から作ったもの。宝暦の改革で肥後藩復興の主役となった「櫨ろう」は、今も全国一の生産量を誇ります。熊本城に残る「櫨方門」は、当時の櫨の役所門であり、肥後とろうそくの深い関係を物語ります。私たちはこの「和ろうそく」を活用し、祭りのシンボルとします。

会場のろうそくに灯かりをともす「あかりびと」は、毎年2日間で約300人以上の方にご参加いただいています。親子、友だち、恋人同士、ふらりと通りかかった方が一人で──。ひとつひとつのろうそくに楽しげに火をともして下さる様子が印象的です。

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◆「熊本暮らし人まつり みずあかり」に込められた想い

①ここに暮す人々に、これ以上のない故郷の「誇り」を抱いていただくこと。
②ここに暮す人々の「希望の灯り」となること。
③この地に暮す責任とこの地の豊かさに貢献する、「暮らし人(くらしびと)」となること。
「みずあかり」とはそんな市民の力を育む為の現場だと思っています。
単なる住民としてこの地に籍をおくのでなく、自立した市民「暮らし人」として、「自らが汗をかき、この故郷の創造者の一人となることを目指す。」

そんな「暮らし人」を一人でも育み、1cmでも市民力を高める。行政と市民力が固い絆で結び合い、互いの力を発揮しあう姿こそ、この故郷を元気な姿に導く新しい地域の形だと信じています。
そしてこの新しい形こそがこの国の復活の力の基となる!
決して大げさではなく、私はそう確信しています。
その未来は、自らの小さな一灯により始まるのです。
「一隅を照らす市民力」全てはここから始まるのです。

一般社団法人熊本暮らし人まつり
代表理事 石原 靖也  (みずあかり発起人)

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◆各受賞アワード

◎2016年度 第12回日本夜景遺産認定(ライトアップ夜景遺産)
同祭りは、「故郷・熊本の魅力を再発見し、ここに暮らす喜びや切なさまでも共感できる市民と地域でありたい。市民が市民の力で祭りを作り、運営し熊本の活力を生み出す。」という大きなコンセプトで実施。しっかりと市民共感を得ており、毎年延べ7000人以上もの市民ボランティアが集まり、地域循環型のお祭りとして持続している。灯りの景観的な美しさやお祭りの魅力はもちろん、「人の心を照らす」という灯りの魅力に共感を得たことも認定に大きく影響した。

日本夜景遺産ホームページ

◎第16回 ふるさとイベント大賞 総務大臣賞(大賞)受賞
平成24年3月受賞(財団法人地域活性化センター)
~地域の活力を生み出す独創的なイベントを表彰する「ふるさとイベント大賞」(第16回となる今回は全国から172イベントが応募。主催:財団法人地域活性化センター)において、最優秀の大賞に選ばれました。2004年に始まり、毎年10月に2日間開かれている「みずあかり」は、熊本城周辺に竹灯籠など約5万4千個のろうそくをともす祭典。景観の美しさに加え、竹灯籠制作など運営のすべてが延べ2千人の市民ボランティアによって担われていること、15万人(当時)を超える観客を集め経済効果が大きいことも高い評価を受けました。

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ふるさとイベント大賞ホームページ
ふるさとイベント大賞紹介カタログ(PDF:約4MB)

◎熊本水遺産登録
平成24年1月21日(熊本市)
~熊本市の水の風土と文化を後世に継承するため市民の水への愛着と誇りをもつよすがとして熊本水遺産に登録されました。

◎第7回 くまもと観光大賞
平成20年3月21日受賞(熊本県)
~新たな熊本の魅力を引き出す特色ある取り組みにより、広く話題を提供し、観光客の誘致を図ったと共に、他地域の模範となる熊本県の観光振興に大きく寄与し、功績を称えられました。

 

◆映像のご紹介

平成24年に受賞をした「ふるさとイベント大賞」で制作頂いた映像をご覧いただけます。映像は、2012年に制作されたものです。

みずあかり紹介映像 ※約10分間

 


 

◆取り組みの背景や目指す目標

「みずあかり」は、地域独自の歴史、文化遺産を再発見し、活力と魅力あふれる熊本を復活させようという「熊本城400年と熊本ルネッサンス県民運動」の活動の中で、みんなが元気になるような新しい祭りをつくろうということから、平成16年(2004年)にスタートしました。話し合いと検討を重ね、「この街に暮らす喜びと、切なさまでも共感できる市民と地域でありたい」という気持ちから、いつもはネオンや車のライトで明るい通りを、歩行者天国にして、竹灯籠の明かりで、夜の熊本城の新たな風景をつくってみようということになりました。

「みずあかり」の名前は、日本名水百選に4つの水源が選ばれ、熊本市においては水道水が100%地下水でまかなわれているほどに恵まれた熊本の「みず」と、熊本の象徴でもある阿蘇の火の「あかり」を意味しています。

熊本が生んだ歌人、安永蕗子(ふきこ)先生の作品に「みずあかりの記」というエッセー集があり、その冒頭には要約すると“湧(わき)水を抱える熊本の街。川面に映るみずあかり。こんな風景を持つ「生地」熊本は、「聖地」である”というフレーズがあります。故郷を「聖地」と評する賛辞は、故郷を「誇り」とする気持ちとなり、その概念を広げることが「みずあかり」のコンセプトとなる事を確信しました。本当に市民が誇りに思える熊本の街にしていこう、そのためにわたしたち市民には何ができるのか、行政に頼るだけではなく、まず自分たちで出来ることを汗を流して行動で示す」。祭りの原点がここにあります。

また、古くから「一隅を照らす」「貧者の一燈」を示すものとして「水あかり」が挙げられます。「小さな明かりでも、みんなが照らすことで大きな明かりとなる」という意味です。市民一人一人の力は小さいかもしれないけれど、多くの賛同を得て力を合わせ新しい祭りを行うことで、それが新たな観光資源となり、街の活性化につながることを願って活動を続けています。

 

◆取り組み内容

【熊本の誇りや資源を活かした祭り】

「みずあかり」は、中心市街地にある「花畑公園」のクスノキの大樹、400年前までそこに在った代継宮(よつぎぐう)のご神木の前で神事、献灯式を行い、美しい巫女の踊りを奉納して始まります。今は別の地に移された「代継宮」の神様を二晩だけお迎えするのです。

会場となる「花畑公園」は、代継宮跡、江戸時代には加藤家別邸、細川家花畑邸として肥後藩の中心をなしてきた重要な場所。第二次世界大戦中は軍の施設があったり、戦後はデモの集会場であったりと、歴史の流れとともに多くの人が集まった場所であり、「森(杜)の都・熊本」の象徴ともいえる存在です。しかし、残念ながら、今では市民があまり利用しない公園となっています。このいわゆる鎮守の杜を「みずあかり」では復活しようと考えました。ここでは「神事・献灯式」を行います。一般の人々も参加できる「あかり献灯」に使用される竹ぼんぼりには、市民の思い思いの願いが書かれた短冊が添えられます。その短冊を照らしだすのは、肥後藩の復興の主役でもあった「櫨(はぜ)の和ロウソク」。そこに阿蘇のご神火が灯され、湧水が注がれます。

●和ロウソク
水俣の櫨の木の実から採れた白ロウを使って作られる和ロウソクを使用。宝暦の改革で肥後藩復興の主役となり、およそ250年の歴史を持つ水俣市の櫨(はぜ)。現在、水俣市では約1万5千本の櫨の木が植えられ、その生産量は日本一を誇っています。

●水
毎年、熊本が誇る湧水を「みずあかり」前日にボランティアスタッフが汲みに出かけています。今年は日本名水の1つである産山村の「池山水源」の水を使用しました。

●竹
地方が抱える竹林被害が広がる中、竹林整備の一環で切り出された約3,000本の竹を使用します。また、祭りに使用した竹は竹炭や堆肥、竹チップ等に加工し再利用することで循環型の取り組みを行っています。

●火
御神火は、熊本の象徴でもある阿蘇の火口から採火されたものです。花畑公園の神事を経て、巫女の手によって来場者の方の竹ぼんぼり(あかり献灯)に灯されます。

 

取組体制・組織、財源について

「みずあかり」の運営は、すべて市民ボランティアによる手づくりです。会場の清掃、材料の調達、オブジェの組立や設置のみならず、資金集め、広報活動、ワークショップ等のイベント企画、当日の運営・撤去まで、毎年8月~10月本番まで延べ6,000人が参加しています。

また、必要な経費は企業・団体から協賛金を集めていますが、大口のスポンサーを募るのではなく、より多くの企業・団体に参加していただけるよう、一口2万円という金額を設定しています。毎年300社以上の企業・団体に協賛いただいています。

経費を安く抑えられている秘訣は、参加する企業が車を出したり、自社製品を提供したり、作業場や倉庫を貸してくださったり、無理のない範囲で協力し合っているからです。また、ボランティア作業日におにぎりや飲み物等の食品を提供してくださる企業や、社員・スタッフを一緒に汗を流すボランティアとして送り出してくださる企業もたくさんあります。お金を掛けるのではなく、少ない予算でこれだけのことができる、地域の相互扶助の精神で作り上げられるお祭りです。

 

「 熊本暮らし人祭り みずあかり 」の目的と方向性

1)「市民力の醸成」
異世代・異業種の交流を通して参加者の社会参画意識と郷土愛を高め、強い市民力を育てます。

●自分たちが暮らす地域を「自分たちの手で創造する」「自分たちの力で活性化する」という意識の啓発を行います。
●郷土の素晴らしさを再発見するきっかけをつくります。
●市民が主体となり、企業や行政と連携する新しい祭りのモデルとして、そのしくみを構築します。
●幼稚園児、小中学生・高校生、大学生が祭りに参加することにより、社会経験や情操・故郷教育の機会をつくります。
●異世代、異業種の交流による新たな「絆」と「コミュニティ」をつくります。高齢者、障がい者の社会参画意識の向上と、社会参画による喜びのきっかけをつくります。
●「暮らし人」が意味する “この街に暮らす喜びと、切なさまでも共感できる市民と地域でありたい”というコンセプトと、自立型の市民の場創りとしての祭りとして位置づけ、更なる市民力の醸成と啓発に努め、熊本の力となる事を目指します。

2)「観光」に貢献
熊本の歴史・文化を背景にした、美しく芸術性の高い景観づくりを行い、祭りによる観光客の増加と熊本の知名度・好感度の向上を目指します。

●県外から「わざわざ訪れる価値のある本物の祭り」と思っていただけるような、熊本城の新たな景観を創出します。
●夜の熊本城の新たな景観を創出します。
●観るだけなく、「あかりびと」(ろうそくに火を灯すボランティア)として参加する楽しみも含め、
来場者に参加・体験型の演出を行います。
●夜の祭りとして、宿泊、滞在型の観光客の増加につなげます。
●熊本県内の「あかり」の祭りと連携し、熊本県全体の観光客増加やイメージアップを目指します。

3)「中心市街地活性化」
中心市街地で同時期に開催されるイベント、商業施設等と連携し、中心市街地の回遊性、活性化、賑わいを創出します。

●課題である中心市街地の賑わい創出のため、特に核となる熊本城周辺で展開することで、地域活性化の一助となる事を目指します。
●「秋のくまもとお城まつり」、「城下町くまもと銀杏祭」(主催:熊本市中心商店街等連合協議会・熊本商工会議所)、「城下町大にぎわい市」(主催:熊本市)等、城彩苑と連携します。

4)「地域資源」を活用

祭りを通して、熊本が誇る「地域資源」や歴史・文化をストーリー化し、参加ボランティアを始め、来場者にアピールします。

●神事の会場となる花畑公園では、竹ぼんぼりに熊本の「名水」を注ぎ、生産量日本一を誇る水俣の「和ロウソク」に阿蘇の火口から採火した御神「火」を灯します。
●代継宮(よつぎぐう)跡地であり、江戸時代には加藤家別邸、細川家花畑別邸として肥後藩の中心であった「花畑公園」をメイン会場に設定します。代継宮当時のご神木であった大楠をメインシンボルとします。

5)「環境」に配慮し、「循環型社会」の祭りを目指す

地域が抱える「環境」の課題に取り組み、使用する竹材を有効的に再利用することで、「循環型社会」の祭りを目指します。
●竹林被害のある山林の竹を積極的に伐採し、山林の再生の一端を担います。祭りに使用した竹は竹炭や堆肥等に加工し、農業資材(堆肥やボイラーの燃料)として循環型の利活用策として再利用します。
●祭り当日、会場周辺の企業・店舗等のライトオフを呼びかけることで省エネルギーにつながる祭りです。来場者や祭りに関わる一人ひとりが、穏やかな灯りが育む豊かな時間を考え、日々の生活スタイルを見直すきっかけをつくります。